まえがき
平成11年9月に発生した茨城県東海村JCOウラン加工工場の臨界事故(以下、「JCO事故」という。)では、我が国で初めて周辺住民の避難等の防護対策が行われるとともに、3名の作業員が重篤な被ばくを受け、2名が亡くなられる前例のない大事故となったことから、JCO事故の対応の反省を踏まえ、原子力災害対策特別措置法が制定された。
また、原子力安全委員会では、平成13年6月に緊急被ばく医療の基本的な考え方やその体制について、「緊急被ばく医療のあり方について」を取りまとめ、その要点を原子力防災対策の技術的・専門的事項を取りまとめた「原子力施設等の防災対策について」(以下、「防災指針」という。)に反映した。原子力発電所等からの放射性ヨウ素の放出に対する安定ヨウ素剤の予防的な服用については、吸入による放射性ヨウ素の甲状腺への集積を抑制する効果があると認められているが、安定ヨウ素剤の服用に係る防護対策をより実効性のあるものとするため、これまでに得られた科学的・生理学的・病理学的な知見等を踏まえて検討が行われ、平成14年4月には「原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について」を取りまとめ、防災指針の改訂も行われた。
これまでに、当協会では、昭和58年度に科学技術庁委託調査において「ヨウ素剤取扱いマニュアル」を作成し、原子力防災対策を円滑かつ的確に実施する際の参考となるよう、関係地方公共団体に提供した。その後、上記のような原子力安全委員会の新たな考え方等を踏まえ、文部科学省の委託調査において、「ヨウ素剤取扱いマニュアル」の全面的な見直しを行った。今回の改訂では、特に安定ヨウ素剤予防服用の措置にあっては、新生児、乳幼児や妊婦への優先性が重視されていることから、安定ヨウ素剤内服液の調製についても分かりやすく言及した。
本マニュアルが、関係地方公共団体等が地域の実情も十分に勘案して、医療関係者等向けのマニュアルを作成する際の参考となれば幸いである。
なお、安定ヨウ素剤服用については、普段からの周辺住民、医療関係者等への情報伝達とマニュアルの熟知が重要であることを認識しておく必要がある。
平成15年3月
財団法人 原子力安全研究協会