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≪スリーマイル型気体放出事故≫

・スリーマイル島事故の概要

1978年3月28日,アメリカペンシルバニア州スリーマイル島原子力発電所の2号原子炉(図3-2)で,いくつかの要因が重なり(図3-3〜3-5)炉心の冷却水の水位が下がった結果,炉心の上部が露出し,炉内燃料の融解がおこりました。この結果,放射性希ガスや放射性ヨウ素などの気体が大気中に放出されました。しかしながら原子炉圧力容器は堅牢であり,破壊されませんでした。

図3-2 加圧水型原子炉の構造
図3-2 加圧水型原子炉の構造
図3-3 二次冷却水の停止,逃し弁閉鎖不全
図3-3 二次冷却水の停止,逃し弁閉鎖不全
図3-4 非常用炉心冷却装置の稼働
図3-4 非常用炉心冷却装置の稼働
図3-5 一次冷却水の充填ミス
図3-5 一次冷却水の充填ミス

放出された気体は,間もなく検出が困難な低いレベルまで大気中で拡散されました。公衆に健康上問題となるような有意の被ばくはありませんでした。
 州知事が,半径5マイル(8km)以内の妊婦と乳幼児の避難を勧告したところ,それ以外の者を含む多くの住民が避難を行いました。また,情報の混乱や電話の輻輳なども問題となりました。

・スリーマイル島事故の特徴

  1. スリーマイル島原子力発電所の原子炉は,炉心部が圧力容器や格納容器で密封されている点で,日本の発電用原子炉と共通しています。そこで,日本の原子力防災の考え方は,この事故の教訓を充分反映したものとなっています。
  2. 放射性希ガスや放射性ヨウ素などの気体が大気中に放出されましたが,原子炉圧力容器は破壊されていないので,多くの放射性物質は原子炉構造内にとどまっていました。
  3. 公衆に健康上問題となるような有意の被ばくはありませんでしたが,情報の混乱などの問題がありました。
  4. 住民の避難指示については,適時に的確に判断することの重要性が認識されました。

:半径50マイル(80km)の住民の平均被ばく線量は0.01mSvで,最大の被ばく線量でも1mSvであり,健康上問題となるような有意の被ばくはありませんでした。(p7「自然放射線による被ばく,医療被ばく,職業上の被ばく,放射線事故による被ばくの比較」参照)】

・被災者の類型

スリーマイル型気体放出事故の場合には,原子力発電所内では補修作業中の外傷などに加えて,放射性ヨウ素による汚染や内部被ばく,および冷却水による汚染などの可能性があります。
 一方,発電所の外では,そこまで到達する気体は大気中に拡散しているので,周辺住民に対する実際の影響はないか小さいものと思われます。雨などにより,身体や衣服が汚染した場合には,皮膚汚染の原因となる可能性があります。

表3-2 スリーマイル型気体放出事故の被災者の類型
  主な影響 主な核種 治療・対策
発電所補修作業員 外部被ばく(−)
皮膚汚染(+)
内部汚染(±)
I-131,Co-60 皮膚汚染の除染
一般外傷の治療
周辺住民 皮膚汚染(−)〜(±) I-131 避難,皮膚汚染(雨など)の除染

・救急医療上のポイント

  1. 一般外傷および一般疾病の救急治療:発電所補修作業員については作業中の外傷が,周辺住民については避難中の外傷や一般疾病(脳卒中,心筋梗塞など)の発生が予想されます。
  2. 汚染を伴う場合であっても,一般外傷や一般疾病などで救命処置を要する場合は,救命処置を優先して行います。
  3. 汚染を伴う外傷は,創面を生理食塩水で洗浄し,清潔なガーゼで被います。遊離する汚染を除去しておけば,健康影響を生ずる可能性は低いです。

・除染のポイント

  1. 除染より救命処置が優先されます。
  2. 除染の始めは脱衣からです。脱衣により放射性物質の90%が除去されます。靴底の汚染にも充分注意します。
  3. 避難住民の除染を行う場合には,精神面を考慮しながら行います。住民の汚染は,そのほとんどが健康に影響する量よりはるかに少ない(しかしサーベイメータには充分反応している)量ですから,冷静に除染を行います。

・住民対応のポイント

  1. 事故の規模や放出状況,気象条件などにより,避難等の必要性が判断されます。避難経路は放射性プルームの中を通らないルートで決定します。
  2. “未来がわかる”と,不安が和らぎます。少ない情報の中であっても,今後の状況の予想,今後の救援の予定を伝えることによって,住民の不安を低減します。
  3. 被災者の登録:被災(避難)住民の氏名,状況,医療記録を登録することは,事故後の公衆衛生学的な経過観察にきわめて重要です。
  4. おそらく健康に問題のない多くの人々が,汚染検査や相談を希望して避難所や医療機関を訪れる(サージ現象)ことが予想されます。病院においては,一般診療に支障のないように,対策チームを決めておく必要があります。
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