1987年9月,ブラジルのゴイアニア市で,廃院に放置されていたセシウム照射装置からセシウム(Cs-137)線源の入った回転照射体が2人の若者により取り外して持ち出されました。この段階から2人の放射線被ばくが始まり,2〜3日後から2人は下痢,目まいなどに悩まされ始めました。1週間後には線源容器に穴を開けることに成功し,この時点から放射能汚染が始まりました。ここで2人は線源を廃品回収業者に売却しました。業者は暗いガレージの中で線源の粉末が光っているのに気付き,家の中に運び込み,その後数日にわたって家族,親類,隣人が,これを眺め,手で触れ,体に塗ったりしました。作業人とその家族全員の体の調子が次第に悪くなり,その内の1人が青白い粉に原因があると思い,ゴイアニア公衆衛生局に届けました。セシウム(Cs-137)は極めて水に溶けやすく散らばりやすいため,汚染地域が拡大し,広範な環境放射能汚染と多数の人々の被ばくが生じました。事故当時全放射能は50.9TBqでした。
精査の結果,14人がリオデジャネイロ,6人がゴイアニアの病院に入院しました。セシウムが体内に取り込まれ内部被ばくが発生していたため,体内に取り込まれたセシウムの排せつのためプルシアンブルーが投与されました(p53「内部汚染の除去剤の使い方」参照)。6才の少女,38才の女性,22才,18才の男性,計4人が4週間以内に出血や敗血症などの急性障害で死亡しましたが,その線量は4.5〜6Gyと推定されました。同程度の被ばく線量で2人が生き残りました。また1名は腕を切除されました。周辺の放射能の測定も行われ,特に汚染の著しい7軒の家屋は解体し撤去され,高汚染区域の表土が入れかえられました。

(出典:IAEA Publication on Accident Response, The Radiological Accident in Goiania, IAEA, 1988)
2000年2月,タイで,コバルト(Co-60)を装着した遠隔放射線治療装置が線源交換を行わずに使用不能になった後,線源を収納した治療器のヘッドが持ち出され,解体されました。解体に引き続いて金属片を含むスクラップは,別のスクラップ業者が所有するスクラップ処理場に持ち込まれ処理されましたが,関係者が次々と指のはれや複数の症状(激しい頭痛,嘔気,嘔吐など)を訴え,病院に運ばれました。不快症状を訴えて来院した複数の患者の容態から,急性放射線症の疑いを抱いた医師により事態が発覚しました。 10名の重度の被ばく者が発生し,4名は6Gy以上でした。その内の3名が被ばく後,2か月以内に死亡しました。

(出典:IAEA Publication on Accident Response, The Radiological Accident in Samut Puakarn, IAEA, 2002)

(出典:IAEA Publication on Accident Response, The Radiological Accident in Samut Puakarn, IAEA, 2002)
(1.2.3.は経済状態の良くない地域の特徴ですが,先進国でもテロ行為による故意の盗難により発生する可能性があります。)
はじめに盗難,解体をした者は,とくに強い外部被ばくを受けている可能性があります。また,人手に渡るたびに被害者が増えて行きます。タイ被ばく事故のように,線源が金属(コバルト)の場合には外部被ばくのみです。ゴイアニア事故のように線源が粉体(もともとは固化されているが長年のうちに粉体化)の場合は,粉体の広がりとともに皮膚汚染や内部汚染も拡大します。
| 主な影響 | 主な核種 | 治療・対策 | |
|---|---|---|---|
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ゴイアニア事故 (線源が粉体) |
外部被ばく(+++) 皮膚汚染(+++) 内部汚染(++) |
Cs-137 | 急性放射線症候群の治療,皮膚障害の治療,内部汚染の治療,避難 |
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タイ被ばく事故 (線源が金属) |
外部被ばく(+++) 皮膚汚染(−) 内部汚染(−) |
Co-60 | 急性放射線症候群の治療,皮膚障害の治療 |