平成11年9月30日に起きた株式会社ジェー・シー・オー(JCO)ウラン加工工場において発生した臨界事故(以下「JCO事故」と書く)では,3人の重症被ばく患者が発生しました。残念ながら2人は亡くなりましたが,被ばくした3人の救急医療は,多少の小さなトラブルはあったもののおおむねスムーズに完遂されました。これはすでに構築されていた放射線医学総合研究所(現独立行政法人放射線医学総合研究所)緊急被ばく医療ネットワークがほぼ完璧に機能したからです。
平成13年6月に原子力安全委員会から報告書「緊急被ばく医療のあり方について」が出され,同時に「原子力施設等の防災対策について」(いわゆる防災指針)の医療対応の項目が全面的に改定されました。(財)原子力安全研究協会(以下「原安協」と書く)は,国の委託を受け,平成13年度から我が国の緊急被ばく医療の実効性を高めるために,原子力発電所等立地の地域または隣接の地域にて,緊急被ばく医療フォーラム,除染実習,ホールボディカウンタやサーベイメータの取扱実習などを行ってきました。また,各地域でお互いに顔の見える緊急被ばく医療ネットワーク構築のための調査検討会を開催し,緊急被ばく医療に関する基礎知識と技術習得および連携体制構築に係る事業を行ってきました。
原安協ではこれらの活動を通じて,多くの関係者からの要望を受け,緊急被ばく医療に関する携帯辞書として,今回「ポケットブック」を刊行することになりました。この「ポケットブック」の対象者は,緊急被ばく医療に関係する医療機関の医師,看護師,診療放射線技師,病院職員,搬送関係者,各地方公共団体の関係職員などです。
本ポケットブックの編集方針は,(1)緊急被ばく医療の初心者でも理解できること,(2)事故をパターン化して,ある事故に遭遇したら,関係するページを読めば理解できること,(3)どのような患者が発生するのかを労災事故時の医療を習得することにより,原子力防災の医療をも理解できるようにする,などとし簡潔明瞭に解説するよう心がけています。
全ての緊急被ばく医療関係者は,この小冊子により正しい緊急被ばく医療の知識を取得し,各地で行われている各種フォーラム,研修,実習などに参加されて,万が一の場合には冷静沈着に行動されることを期待します。
平成17年3月
財団法人 原子力安全研究協会