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第2章 救急隊の準備

正確な情報収集によって、救命処置優先か、放射線防護や放射性物質による汚染拡大防止措置の優先かが決まる。

入電時の確認事項

消防署の情報伝達
※クリックすると拡大表示します。

  1. 指令室における情報収集のポイント
  • 概要
  • 傷病者の人数 → 医療機関へ受け入れ要請(多人数なら複数の医療機関等へ情報の一斉送信)
  • 傷病者の重症度(生命危機状態かどうかが最も重要な情報)
  • 放射性物質による汚染の有無 → 救急隊の装備、救急車の養生の必要性を判断
  • 現場担当者および連絡窓口

  1. 原子力事業所への依頼事項
  • 情報窓口担当者を確認
  • ファクシミリによる情報送信を依頼
  • 通報時に不明な情報については、追って第二報、第三報の連絡を依頼
  • 事業所の入口から所内の事故現場までの救急車の誘導者を依頼
  • 事故概要および傷病者に関する説明担当者の確保を依頼
  • 搬送時の放射線管理要員等の同行を依頼

救急隊出動時の準備

救急車等の養生は現場到着後に放射線管理要員に協力を依頼することも可能である。重症傷病者の発生時には、養生のために出動が遅れてはならない。養生用の資機材を積んだら直ちに出場する。

搬送時における放射性物質の汚染拡大防止措置

傷病者の容態が生命危機状態でなければ、放射線管理要員の助言、協力を得て救急車内全面の養生とともに、ストレッチャー、担架、バックボードの養生も完全に行うことが望ましい。傷病者の容態が以下の場合が、養生を行う状況に当たる。

  1. 生命危機の状態ではないが、搬送関係者に二次汚染が予想される程度の汚染傷病者の場合
  2. 傷病者の養生が全くできていない場合
  3. 放射性物質の種類や汚染・被ばくの状況が全く不明の場合
  4. 多人数の傷病者を同時に収容する場合

傷病者が生命危機の状態にある場合や人体に悪影響がない軽微な汚染の場合には、後述の傷病者搬送用シートを用いることで、ストレッチャー、担架、バックボードの養生は省略できる。

【ストレッチャーの養生例】

ストレッチャーには、ビニールシート等を敷き、必要であればろ紙シート(片面防水加工)も併せて使用する。
養生に際しては、ストレッチャーの昇降機能および傷病者の固定機能を損なわないように注意する。

ストレッチャーの養生例
ストレッチャーの養生例

【救急車内の養生例】

(1)車内の移動可能な備品等は車外にいったんおろす。  
(2)床面を優先し、順次下から上へビニールシートを広げる。 (3)側面の養生。床面に広げたシートとの重なり目はテープで貼る。
(4)使用資機材は事前にカッター等でシートを切って露出させておく。 (5)(1)でおろした備品等を養生して車内に戻す。ストレッチャーは、ビニールシート等で覆う

搬送終了後は、車内の汚染検査を行うとともに、放射線管理要員等に養生の撤去・回収を依頼する。

【傷病者搬送用シートの利用】

搬送用シートには、

  1. 登山用シュラフカバー(素材はゴアテックス®)、
  2. 数社の開発試作品、

等がある。

身体全体を封筒状の素材で包み込むことによって、移送中に汚染が外部に飛散することを防ぎ、これによって救急車内およびヘリコプター内の養生の省略が可能となる。

傷病者搬送用シートの使用例
傷病者搬送用シートの使用例

ケーススタディー

過去の実例から学ぶ【事例2】

原子力発電所の廃棄物処理タンク内で、作業員が縄ばしごから落下し、心肺停止となりました。作業員の身体表面に付着した放射性物質を取り除くために除染処置が行われましたが、心臓マッサージなどの緊迫した状況の中で、結果的に下着の一部に放射性物質が残ってしまいました。汚染拡大防止のためシートで全身を包む処置がなされた上で、救急車で近隣の医療機関に搬送されました。(それまで発電所と医療機関の間には、汚染傷病者の対応に関する取り決めはなく、事前に発電所から医療機関へ汚染傷病者の連絡はありませんでした。)

傷病者の下着に付着していた放射性物質の量は医療・搬送関係者にも、傷病者自身にも影響を与えるものではありませんでした。しかし、医療機関にとっては初めての経験であり、大きな不安と困惑を感じながらの医療処置となりました。

教訓(1):

情報伝達のためには、あらかじめ伝達経路を準備しておくことが必要です。

何かあると情報の発信側が責められるという傾向がありますが、情報の発信側は多くの場合、緊迫した苦しい状況から発信しています。一方、情報の受信側では情報が不足していると混乱が起きてしまいます。そのため、より広く情報を共有することが重要です。情報は、良く準備され訓練されている経路に適切に流れます。準備のない所に急に情報伝達することは、かなり困難です。事前に関係者が協力して、双方向の情報伝達経路を構築しておく事が重要です。

教訓(2):

放射性物質の存在を示す情報は、それのみでは混乱する事があります。

その量の大小に関わらず、放射性物質の存在は不安感を与えます。どういう影響があるのか、どう対処すればよいのか(装備、救急車や処置室の養生が必要かどうか)、といった情報が同時に付加されることが重要です。

ケーススタディ事例2のように傷病者が生命危機の状態にある場合は、救急隊の装備や養生よりも救命処置が優先されることがあります。そこで、今後の現場対応の一つの参考例として、救急隊の現実的な対応を以下に示しました。(ただし簡易装備をする場合には、放射線管理要員によって放射線測定を行い、汚染の有無についての担保をする必要があります。)


  1. 一枚目の手袋はテープで固定し、二枚目の手袋は頻回に交換する。
  2. シューズカバーの開口部はテープで固定する。
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